第37章 黒社会最悪のコンビ
「無駄だよ。君の攻撃は、間合いも呼吸も把握済みだ」
「加減したんだよ。本気なら頭蓋骨が砕けてたぜ」
「そりゃ、おっかない。ま、中也の本気の度合いも把握済みだけど」
そう言いながら、太宰さんは辿り着いた扉を開ける。
「……ほら、いたよ。助けを待つ、眠り姫様だ」
「眠り姫様ねぇ……」
例えとしては最悪である。
太宰さんが指さす向こう側は、コンクリートの床にレンガの壁の部屋。
床から天井にかけて樹木が這い、その一角には意識を失っているQが樹木に絡めとられて囚われている。
その傍には、パイプ椅子に座らされたQの呪いの人形が座らされていた。
「木の根を切り落とさないと。詞織、おいで」
「はい、太宰さん」
入口から動かない中也を置いて、あたしは太宰さんと入室した。
Qを前して、あたしの皮膚の下がザワザワと騒ぐ。
どこか、心の中に恐怖でもあるのだろうか。
自分よりもずっと年下の子どもに?
いや、異能力者に年齢は関係ないか。
そんなことを考えていると、太宰さんがあたしを呼ぶ。
「詞織、Qを殺せ」
「え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「聞こえなかった? Qを殺すんだ」
救出するように言われてるのに。
そう思ったのも、やはり一瞬で。
「はい、太宰さん」
子どもを殺すことに躊躇いはない。
やはり、あたしは太宰さんの命令なら、いくらでも非道になれるんだ。
そのことがどこか嬉しくて。
どこか誇らしかった。
あたしは指に歯を立て、溢れた血液の刃を、意識を失っているQに添えた。
すると、太宰さんはずっと黙って見ていた中也を振り返る。