第37章 黒社会最悪のコンビ
「テメェらが組織から消えた夜、俺はあれの89年ものを開けて祝った。そのくらい、太宰……テメェにはうんざりしてたんだ」
あれだけの嫌がらせを受けていれば、うんざりするのも仕方がないと思う。
「組織を抜けるとき、あたしたちもしたよね。お祝い。確か、あたしが作った爆弾を……」
「そうそう。詞織が作った爆弾を、中也の車に記念に仕掛けたんだ」
「あれ、テメェらか!」
シリアスに語っていた中也が、太宰さんの暴露発言に怒鳴った。
「詞織! テメェの爆弾は誤作動を起こすから、梶井に任せろって話だったろーが!」
「だって、太宰さんに頼まれたんだもん」
「不思議だよね、詞織の作る爆弾。作ってる間は爆発しないのに、詞織の手を離れたら必ず誤作動するんだからさ。梶井君も不思議がってたよ。何で作ってる間には爆発しないのか、って」
あたしの作る爆弾は、普通なら作っている間に爆発してもおかしくないらしい。
梶井さんに作っている間の工程を見てもらったけど、すごいびっくりしていた。
これで何で爆発しないんだ、とか。
しかも、何回も計算しているんだけど、必ずミスして想定より威力が大きくなっちゃうんだよね。
「中也の車、思ったより吹っ飛んでびっくりしたよ。ねー、詞織」
「ねー、太宰さん」
可愛く首を傾けて呼びかける太宰さんに、あたしも同じようにして応じる。
中也はふるふると怒りに身体を震わせながら、地下へ下りていった。
「あぁ、気に食わねぇ。太宰の顔も態度も服も、全部だ」
「私も中也の全部が嫌いだね。好きなのは、中也の靴選びのセンスくらいだ」
「あ……? そうか?」
バカだな、中也。
そんなわけないじゃん。
少し照れた中也が自分の靴を見つめていると、太宰さんは「うん」と言って彼を追い越した。
「もちろん、嘘。靴も最低だよ」
「テッメェ!」
一瞬信じてしまった恥ずかしさと、太宰さんへの殺意を宿した鋭い蹴りを放った中也だけど、太宰はサッとしゃがんでそれを避け、得意気に笑った。