第37章 黒社会最悪のコンビ
「全く……ここ数年で最低の1日だよ」
「何で俺がこんな奴と……」
太宰さんと中也はそうぼやきながら小屋の扉の前へと立ち、同時にドアノブへと手を伸ばす。
「俺の隣を歩くんじゃねぇ」
「中也が私の隣に来たんじゃあないか」
2年間も顔を合わせていなかったはずだが、相変わらずだ。
ピリピリとした空気の中で、睨み合う2人に代わって、あたしが扉を開ける。
すると、中也はスタスタと先に中へ入って、太宰さんを振り返った。
「いいか? 仕事じゃなきゃ、1秒でテメェを細切れにしてやる」
「その前にあたしが中也を殺す」
もう殺しは止めたけれど、そこに太宰さんが関わってくれば話は別だ。
太宰さんを殺そうとするならば、それがたとえ中也でも首領でも、絶対に殺してやる。
あたしの言葉に、太宰さんは嬉しそうな顔であたしの頭を撫で、中也はチッと舌打ちをした。
「とにかく、テメェは俺から2メートル以上離れろ」
「喜んで」
そう言って、小屋の中に入った中也に対し、太宰さんは入口で待機する。
小屋の中は簡素で、特別目立ったものはない。
当然、Qの姿も見当たらなかった。
けれど、中也はすぐに床の不自然さに気づき、躊躇わずにそれを開ける。
仮に何かの罠があっても、自分なら対処できるという自信でもあったのか。
もしくは、罠などないと確信があったのか。
床下には、地下へと続く階段があった。
「太宰、『ペトリュス』って知ってるか?」
「ペトリュス? 何かの呪文?」
「違うよ、詞織。目玉が飛び出るほど高い葡萄酒」
地下を覗き込みながら聞く中也に、入口の扉から覗き込むような姿勢で太宰さんが答える。