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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第36章 共闘と対立のはざまで二人は


 捕虜として捕らえていた姐さまに伝達役として、マフィアの首領である森鴎外への密会の誘いを持って拠点に帰ってもらう。
 すると意外にも、返事はすぐに来た。

 姐さまがマフィアに戻った翌日。
 公園の植木の縁に、太宰さんは長い足を組んで座っていた。
 あたしはその隣でチョコレートを食べながら、足をブラブラとさせている。
 少し強めの風が吹いて、公園の小さな風車がカラカラと音を立てた。

 そこへ、複数の足音が耳に届く。
 それに気づいた太宰さんが、座っていた植木の縁から飛び降りた。

「ようこそ、首領」

「4年ぶりだねぇ、太宰君。詞織ちゃんも、大きくなって。あの頃は小さくて可愛かったのに」

 ニコッと笑いながら、首領はあたしたちに手を振る。
 そんな首領が怖くて、あたしは太宰さんの後ろに隠れ、コートをギュッと握り締めた。
 そんなあたしの肩を、彼は優しく抱いてくれる。

「詞織は今でも充分可愛いですよ。正直、首領の守備範囲外に出て安心してます」

 首領は対モンゴメリ戦で見たときと雰囲気がまるで違っていた。
 オールバックに整えられていた髪に、質の良い服装と黒い外套、首からストールを掛けている、あたしがよく知る首領だ。

 首領の後ろには、マフィアの武闘派組織「黒蜥蜴」の百人長である広津 柳浪(りゅうろう)と十人長の立花 道造、銀、他構成員が多数。

 再会を喜ぶ首領が太宰さんに続ける。

「私が買ってあげたコートはまだ使っているかい? 詞織ちゃんにも、揃いでワンピースを買ってあげていただろう」

 太宰さんは「もちろん」とにっこり笑って、瞬間、酷く冷めた視線を首領に投げた。

「焼きました」

 その返答に対する彼の表情は読めない。
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