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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第5章 血を操る少女


「どうしようか? とりあえず、今日は君に必要なものを揃えるために休暇届を出しておいたから、色々見て回ろう。君もまだ眠いだろう? 午前中はゆっくり休んで、午後から出かけようか」

 眠いだろう、と言ったところで、詞織の紅い瞳がトロンと眠気を訴え始めた。
 そんな少女の身体を抱っこしてやると、詞織は私の首に細い腕を回す。

「私の部屋まで運んであげるから、ゆっくりお休み」

 コクンと頷くと、詞織は私の耳元で静かな寝息を立て始めた。
 しばらく歩いていると、見慣れた人物が向こうから歩いてくる。
 私はその人物を見つけて「げっ」と顔を顰めた。

「げっ、太宰」

 向こうも私と同じように顔を顰める。
 私よりも頭一つ分は低い背丈、オレンジの頭に黒い帽子を乗せたその人物は、私の大嫌いな中原中也だ。

「やぁ、中也。相変わらず小さいね」

「ンだとコラァ! 殺んなら相手すっぞ……って、何だよそのガキ」

 いつも通りの反応に加えて、私の首にしがみつく詞織を見つけた中也が尋ねてくる。

「任務中に拾ったのさ。名前は櫻城詞織」

「異能力者か?」

「あぁ。行く宛てもないようだし、我々に貢献してくれそうだったからね」

「そんなこと言って、単にテメェが面白がって拾っただけだろうが」

 おや、分かってしまうのかい?
 全く、そういうところも嫌いなのだよ。

「首領には許可を取ってあるから、君に文句を言われる筋合いはない。じゃあ、私は行くよ。中也と違って忙しいんだ。この子の服や調度品を用意しないといけないからね」

「それのどこが忙しいんだよ!」

 フンッと、苛立たしげに去って行く中也が可笑しくて、私は小さく笑った。

* * *


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