第25章 闇に咲く紅葉の花魁
「姐さんの部下に拷問専門の班があったよね? でも、稀にその班でも口を割らせられない頑固者が現れることもあった」
そう。
そんなときは、太宰さんが手を貸した。
そして、太宰さんが聞いて、口を閉ざしたままの捕虜は、たったの1人もいなかった。
ガチャッ、と鍵が不穏な音を立てて掛けられ、同時に姐さまの顔が青ざめる。
太宰さんは袖を捲り、指をパキッと鳴らした。
「ここからは、大人の時間だね」
* * *
あたしは太宰さんに言われ、姐さまの拘束を解いた。
彼はパイプ椅子に逆に座り、背もたれに肘をかける。
拘束が解かれ、彼女は身体を起こした。
「姐さん、大人の取引をしよう」
そう、太宰さんは始めた。
太宰さんの拷問は、暴力で身体に直接聞くようなものではない。
もちろん、それが全くないわけじゃないけど。
そのほとんどは相手の弱味や欲につけ入り、脅したり、取引を持ち掛けたりする。
「鏡花ちゃんを助ける計画がある」
「何?」
姐さまの眉が動く。
あたしは黙って2人の話を見守った。
太宰さんの作戦はこうだ。
一度鏡花を逮捕させ、異能特務課と司法取引をするというもの。
逮捕という言葉に、姐さまは目を見開いて驚愕する。
当然だ。鏡花は35人殺しで手配中の身。捕まれば死罪は確定だ。
けれど。
「成功すれば探偵社にも入れる。彼女の命と夢を同時に守る唯一の方法だ」
まさに一石二鳥。
しかし、失敗すれば鏡花の命はない。
もちろん、そんな心配はしていない。
太宰さんの立てた作戦が失敗したことなんてないから。
マフィア時代、あたしや龍くんが失敗しても、太宰さんの立てた作戦は必ず成功した。
それを踏まえた上での作戦を立てているから。
それでも、彼の作戦を聞いた姐さまは首を横に振った。
「不可能じゃ。闇に生まれた者は闇にしか生きられぬ」
成功する、失敗する以前に。
仮に成功して探偵社に入れても、鏡花は上手くやれない。
鏡花の傷つく姿は見たくない、と。
「それは鏡花ちゃんでなく、貴女の話でしょう? 姐さん」
太宰さんの反論に姐さまは息を詰めた。
「どういうこと? 太宰さん」
首を傾げて尋ねると、彼はそれに答えてくれる。