第25章 闇に咲く紅葉の花魁
「姐さんが鏡花ちゃんと同じ歳の頃、慕っていた年上の男性と共に組織から抜けようとしたんだ」
けれど、それが首領に露見し、男は殺された。
姐さまが生かされたのは、異能力を持っていたからだろうか。
「それ以来、貴女はマフィアを恨んでいる」
最後は姐さまに向けられた言葉。
姐さまは沈黙する。
答えるだけの言葉を持たなかったのか、答えたくなかったのか。
そんな彼女に、太宰さんは息を吐いた。
「先代の頃の話だ。今とは状況が違う」
何より、と太宰さんは続ける。
「何より私がいる。鏡花ちゃんは同じにはならない」
道を踏み外しそうになれば。
闇に帰りそうになれば。
そのときは私が止める。
それができると確信しての台詞。
それは誰にでも……あたしにも当てはまることだった。
もし、あたしが間違えそうになったら、太宰さんは止めてくれるだろうか。
姐さまは目を伏せる。
「……“外の輝く世界を見せてあげよう”と、あの人は言った」
「見せてあげればいい。貴女が鏡花ちゃんに」
再びの沈黙。
それは永遠にも思える時間だった。
そして。
やがて、姐さまは躊躇いがちに口を開いた。