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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第22章 赤毛の少女と追いかけっこ


「不公平よ。あなたもあたしの気持ちを知るべきだわ。この部屋の中で永遠にね!」

 モンゴメリの意思に応じてアンが動く。
 素早く伸びた腕が、敦へと向かった。

「敦!」

 それを寸でのところで彼は避ける。
 扉を開けなきゃ。
 でも、攻撃を避けながら行くなんて、あたしにはできない。
 けど、敦のスピードなら……。

「敦! あたしが隙を作るから、あんたは鍵を持って扉を」

「分かりました」

 あたしは背中の傷に触れ、腕を凪ぐようにして血液を飛ばした。


 異能力――『血染櫻・櫻吹雪』


 無数の紅の刃がアンを襲う。
 その隙を縫って、敦は人形の横を通り抜けた。
 そして、彼は扉の前に立ち、谷崎が落とした鍵を使い、その鍵穴に挿そうとして……。

「少年! 危ない!」

 そう叫んだのは首領だった。

「え?」

 鍵が大きく歪み、鋭い先端が敦の首を狙う。

「⁉」

「敦⁉」

 避けた敦の首を鋭い棘が掠め、彼はとっさに鍵を投げ捨てた。
 鍵は元の形に戻り、チャリンと乾いた音を立ててモンゴメリの足元に落ちる。

「あら、大事な鍵をこんな風に扱って……孤児院の先生に叱られるわ」

 そう言いながら、少女は鍵を拾う。
 その手の中では、鍵が大きな口を開けて笑っていた。

「何よ、それ……扉を開けたら勝ちだと言ったじゃない!」

「そうよ、開けられればね。こんな鍵をどう使うのか、あたしにも見当がつかないけど」

 鍵と同じ様な顔をして、モンゴメリは笑った。
 最初から勝たせる気などなかったんだ。
 敦が奥歯を噛みしめる。
 あたしも、手を握りしめた。

 もともと、あたしの異能は長期戦向きじゃない。
 スピードも敦には遠く及ばないし、あたしの力じゃモンゴメリには勝てない。
 気の抜けた敦をアンが襲う。

「敦!」

 一瞬、反応の遅れた敦だったけど、それが致命的だった。
 あたしは敦を突き飛ばす。
 彼のいた場所をアンの腕が通り、取り残されたあたしの身体に絡みついた。
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