第22章 赤毛の少女と追いかけっこ
1枚の写真を敦に見せ、「どこかで見なかったかな?」と尋ねた。
天使、という言葉に彼の捜し人が誰なのかうすうす分かった。
写真にはあたしが思ったとおり、金色の髪に青い瞳の少女が写っている。
「いえ……残念ながら」
首を振る敦に肩を落とし、今度はあたしに話を振ってくる。
「君は?」
首領と真正面で目が合う。
畏怖と、組織を抜けた罪の意識に身体が震えた。
首領の瞳は「否定しろ」と言っている。
あたしは、口の中に溜まった唾液を呑み込んで答えを絞り出した。
「し……知りません……」
どうにかそれだけを口にする。
あたしたちの答えに、首領は目に見えて落胆した。
「エリスちゃんという名でね。もう目に入れても痛くないくらい愛らしいのだよ! あ、本当に入れたら少し痛かったがね」
どうやら、首領の変態・ロリコンは健在らしい。
こんな姿を見せられてもあたしの中の恐怖は消えないのだから、刷り込みとは恐ろしいものである。
「とにかく、この子とはぐれて、私はもう気が気でなくって……」
首領の様子に、敦は変人を見るような目で彼を見る。
まぁ、そこは間違ってないけど。
「あの扉の向こうにいるかもしれない。もしそうなら、今逃げたら私は一生後悔する。だから、私も残るよ」
首領の真剣な瞳に、敦は一瞬考えて、そして頷いた。
「……分かりました」
あたしはその様子を見ていることしかできず。
話し合いが終わったととったのか、モンゴメリが手を叩いて注目を集める。
「ルールは簡単よ! 可愛いアンと追いかけっこをして、タッチされたら皆さんの負け。捕まえる前に、その鍵でドアを開ければ皆さんの勝ちよ。人質をみんなお返しするわ」
不意に空中から金色の鍵が現れた。
何の変哲もなさそうだが、あたしの異能力で開かなかったドアがそれで開くらしい。
「それで、参加されるのは誰?」
その言葉に、あたしたちは1歩前に出る。
「3人同時でもいいのか?」
谷崎がモンゴメリに問う。
一般人だと思われている首領は、当然頭数に入っていない。