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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第17章 紅の櫻守


「いいことを教えてあげよう。明日、『五大幹部会』がある」

「五大幹部会? 馬鹿な。あるならとっくに連絡が……」

 五大幹部会。
 数年に一度しか開かれない、超重要事項を決定するための会だ。
 それが、どうしてこのタイミングで。

「理由は私が先日、組織上層部にある手紙を送ったからだ。で、予言するのだけど……」

 太宰さんの瞳が妖しく光る。

「君は私を殺さない。どころか、懸賞金の払い主に関する情報の在り処を私に教えたうえでこの部屋を出て行く。それも内股歩きのお嬢様口調でね」

「はぁ⁉︎」

 中也が驚きの声を上げた。
 何を言っているのか、あたしにも分からない。
 現状はどう考えても太宰さんが不利だ。
 それが、何をどうしたら中也がそんな面白いことになるのか。

「私の予言は必ず当たる。知ってると思うけど」

「この……状況からか? ふざける……」

 あたしと同じことを考えたらしい中也だったけど、不意にハッとする。

「……手紙?」

「手紙の内容はこうだ。『太宰 死歿(しぼつ)せしむる時、汝らの凡(あらゆ)る秘匿 公にならん』」

 太宰さんが明かした手紙の内容に、あたしもようやく合点がいった。
 中也も太宰さんの手紙の内容に、今までの流れの意味を理解し、太宰さんを解放してバッと距離を取る。

「まさか、テメェ……」

 つまり、元幹部で裏切り者の太宰さんを捕縛したものの、上層部には『太宰が死ねば組織の秘密が全てバラされる』という手紙が送りつけられた。

 太宰さんは元幹部で、組織の根深い闇を知る人間だ。
 彼の知る情報が検事局にでも渡れば、マフィア幹部全員を百回は死刑にできる。
 太宰さんの言う通り、幹部会を開くには充分な脅しだ。

 そんな脅しに屈するようなマフィアではないけれど、それは幹部会で決めること。
 決定より先に太宰さんを殺せば、独断行動で背信問題。罷免か、最悪処刑。
 そして、中也がそんな諸々の柵を振り切って形(なり)振(ふ)り構わず太宰さんを殺しても……太宰さんは死ねて喜ぶだけ。
 それに思い至った中也は、悔しそうに太宰さんを睨みつけた。
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