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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第17章 紅の櫻守


 翌日、あたしは太宰さんの下宿を訪ね、携帯を鳴らし、もう一度心当たりを探した。
 けれど、やはり太宰さんはどこにもいなくて……。
 あたしは、自分が想像する中で最悪の場所を探すことにした。

 ……ポートマフィアの本拠地。

 マフィアを抜けて四年。
 一度も近寄らなかったその場所は、この四年の間でも、少しも変わらない姿で佇んでいた。
 そこへ、ここに来る前にマナーモードにした携帯が震える。
 着信が凄いことになっていた。しかも、全て国木田だ。
 メールも入っている。


 ――『小僧がマフィアに攫われた。今すぐ社に戻れ』


 マフィアに攫われた、か。
 あたしはそれに返信することをせず、電源を切った。
 敦が攫われたことより、太宰さんの方が大事だし。

 携帯をポケットに仕舞ったあたしは、正面から入ろうとして、それはマズいだろうと思い直す。
 こっそり隠れながら裏口に回ると、そこには見張りが四人。扉は暗証番号の入力が必要なものだ。
 大腿に隠していたナイフで左の手のひらを傷つけ、それを細く糸のように伸ばして様子を伺うことにした。


 ――異能力『血染櫻・櫻便(はなだより)』


 視覚をシャットアウトし、血液に聴覚を移行する。

『退屈だよなぁ』

『何だよ、しりとりでもするか?』

『いや、それはないだろ』

『おい、しっかり見張れよ』

『お前は真面目だなぁ』

『まさか、マフィアの本拠地を襲うような奴なんかいねぇだろ』

 そんな、緊張感のない会話が聞こえてきた。
 奇襲を仕掛けるならここだろうか、とそんなことを考えていたときだった。

『そういやさ、捕まったらしいぜ』

『誰が?』

『四年くらい前にマフィア抜けた裏切り者』

『すげぇな。マフィア裏切るとか、度胸ありすぎだろ』

『ここだけの話。その裏切り者って、元幹部らしいぜ』

『はぁっ? 幹部様が組織抜けた裏切り者って、それヤバくねぇ⁉︎』

 太宰さんのことだ!
 そう思ったときには、あたしの身体は動いていた。
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