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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第16章 少女の一番


「元議員から預かった。同時に伝言もな」

「伝言って?」

 言いながら、詞織さんはチョコレートの包装を解いていく。

「元議員はキミに、専属のボディーガードになってほしいみたいだよ」

「え……あんなに酷いこと言っていたのに?」

 僕は思い出す。
 行きがけの新幹線の中で、彼は彼女を『化け物』と呼んだ。
 その態度は駅で襲撃されるまで変わらず、襲撃後は少し大人しくなったと思っていたけど。

「そりゃあ、あれだけ身体を張って守られたら、気持ちも変わるよね」

 そうだろうか。
 元議員はどちらかというと、『金を払っているのだから、守って当然』という考え方をしそうだけど。
 そんなことを思っていると、詞織さんは貰ったトリュフを口に運んだ。

「行かないから。あたしは武装探偵社の社員。太宰さんがここにいる限り、あたしがここを出ることはない」

「ダザイさん?」

 太宰さんの名前が出て、二人の視線が彼に集中する。

「ほぅ、貴殿が『ダザイさん』か」

「いかにも、私は太宰だ」

「詞織ちゃんから『名前だけは』聞いてるよ」

 バチバチッと再び火花が散り、一触即発の雰囲気に空気が震えた。

「ちなみに、キミは詞織ちゃんのお兄さんかな?」

「残念ながら、私は詞織の兄ではないね」

「まさか、父親か?」

「私と詞織は五つしか離れてないよ」

「親戚とか?」

「そもそも、私と詞織に血縁関係がない」

「じゃあ友達?」

「友達って関係はしっくりこないねぇ」

「先輩後輩か?」

「社に入ったのは同じ日だから、どちらかといえば同期?」

 いやいや、どう考えても親子関係はないでしょ、と内心でツッコミを入れてしまう。
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