第10章 少しずつ…
黄瀬はスポーツバッグをかけ直すと、私に言った。
「正直、俺も菜月っちのこと…嫌いまではいかないけど、苦手だったッス。だから、こんなに好きになるなんて思ってなくて…。」
「え…?」
「…ぶっちゃけ、女の子なんて誰でも同じだと思ってて…。でも、祥吾君に負けた俺を、あんなふうに励ましてくれたり、練習試合で泣いてた俺をかばってくれたり…こんなんで好きにならない理由を教えてほしいくらいッス。」
ケタケタと笑う黄瀬。
「…頭悪いけど、キラキラしてて、カッコよくて、バスケも上手くて、負けず嫌い。良いところいっぱいあるのにね。他の女の子は顔ばっかり見てるから、残念。」
「…見てくれるの…菜月っちだけ…。ね、こっち向いて?」
「…?」
私は黄瀬の方を見た。車が通る。そして…風が吹く。
「黄瀬…君…?」
「名前で呼んでよ。呼んでくれるって言ったじゃないッスか。」
「…顔…近いよ…。」
どんどん近づいてくる黄瀬の顔。
「俺…菜月っちのこと…。」
「何してるんですか、黄瀬君。」
「ぬわっ!?黒子っち!?」
「な~に抜けがけしてんだ黄瀬。」
「火神っちまで…!」
バッ…と私から顔を遠ざける黄瀬。