第10章 少しずつ…
私は歩いていく黄瀬の背中を追った。
「黄瀬君。」
「!…菜月っち…。どうしたんスか?」
「…ちょっと、話さない?」
「!…いい…ッスけど…。珍しいッスね…。」
「…」
私は黄瀬君の隣を歩いた。
「…?何の話ッスか?」
「…黄瀬君が嫌いです。」
「…!?えぇっ!?」
半泣きの黄瀬。
「…人のプレイは真似するし、いつまでも諦めが悪い。」
「うっ…!」
「でもそれは、良い意味で。人のプレイを真似れることは、誰でもできるわけじゃないし、諦めが悪いのも、良いことだと思ってる。黄瀬君のプレイスタイルだから。」
「!…」
「…嫌い…っていうか…嫌いだった。」
「えっ…。」
「今は、普通?」
「!…そこは好きって言ってくださいよぉ!」
そう言いながらも、黄瀬はクスッ…と笑った。
「…?」
「帝光中の時、なんで菜月っちがキセキの世代の皆に好かれてるのか、どうしても理解できなかったんス。それは、後々わかってきたッスけど……どうしても納得できなくて…。」
「…」
「でも、やっと納得できた。俺、菜月っちが好きッス。」
「!…ありがとう。」
私は微笑む。
「私も、好きだよ?」
「…そういう意味じゃ…ない…ッス…。」
「ん?」
「あぁ!何でもないッスよ。それより、今度は負けないッスから。」
「うん、こっちも。今度も勝つから!」
「望むところッス!」