第8章 練習試合と一歩動いて…
「あの…菜月さん。」
「ん?どうしたの?」
「…やっぱり驚かないんですね…。」
「え…お、驚いてほしかったの?」
「…菜月さんは怖いものとかないんですか?」
「ん?」(ど、どうして…練習試合のタイムアウト中にこんな質問を…?)
「あ…すみません、そうじゃなくて……あの…黄瀬君や他の方々の弱点とか…ないですか…?」
「…弱点…?」
「…上手くかわせる方法がないんです。僕のミスディレクションは40分しか使えないですし…。」
「…例えば、黄瀬君は相手の技をコピーしなくても強い。だから、黄瀬君にパスがあまりいかないように仕向けるとか…。」
「…やっぱり、2人がかりとか…ですか…?」
「うーん……でも、それじゃあ誰かのマークが空くんだよね?」
「はい。」
すると、タイムアウトの時間が終了した。私はモップを片付け、再び試合を観察することにした。
黒子は監督に1試合40分連続フルの活用は無理だと伝えると、しばかれていた。
そして、監督は何かアドバイスをしていた。
「中固めてきたな。」
黄瀬が笠松にパスを出し、笠松が3Pを決める。
『おぉっ!』
22対28
誠凛が負けている。
「…」
「菜月ちゃん、何か良い案ない?帝光中の時、どうしてた?」
「…帝光中の時は……こんな場面…あっても、征く……キャプテンがどうにかしてたので…。」
「…そっか…。」
「…彼らは…負けるなんてこと…なかったです…。」
「…」
監督は私を無言で見つめたまま、何も言わなかった。そして、また試合に見入った。