第21章 WC予選
「しかも並の強敵ならまだしも、キセキの世代がだ。半端じゃねぇぞ。」
「っ…。」(真君…。)
それから…皆、控え室を出て、帰ろうとした時だった。
「すみません、ちょっと先行っててください…。」
「お?トイレか?」
木吉に聞かれ、私は頷いた。
「お~、わかった~。」
試合の最中からずっと我慢していたのだ。
「…はぁ…。」
トイレで用が済んだあと、私は出口に向かって歩いて行った。
「!…あれ…木吉先輩…?」
「!…あぁ、菜月か。もう皆、出口にいると思うぞ?」
「あ、はい。」
木吉の横を通り過ぎようとした時だった。
「あれ、お前、あん時の…?」
「!…」
木吉が話をしていた相手と目があった。
「…」(この人…昨日お兄ちゃんが話していた人…?)
霧崎第一のジャージを着ていた。
「…ふ~ん。」
「んで、どういうことだ。」
「おっと…言い過ぎたな。まずは秀徳とだろ?頑張ってよ、マジで応援してるから。」
ベンチから立ち上がり、両手をポケットの中に入れると、歩いたまま話した。
「!…」
私の横を通り過ぎるとき、ニヤリと笑みを浮かべた。
「あぁ、あと。怪我、早く良くなってよ。」
「!…」
「心配してるんだからさ。」
「き…木吉先輩…。」
「…ははは…そんな暗い顔すんなって、へーきだよへーき!」
木吉は私の頭を撫でてくれた。
「っ…。」
「…ほら、皆待ってるから、行こうぜ?」
「…木吉先輩…無理だけはしないでくださ」
「菜月?」
「!…」
「シーッ。」
人さし指を鼻の前に立てると、口で音を立てて言った。
「…っ…はい…。」
「…ゴメンな?そんな顔させたかったわけじゃないんだ。」
「…大丈夫…です…。」
いつか……
崩れてしまいそうで…
怖い。