第21章 WC予選
16年間、繰り返してきた日常が…変わっていくんだ…。
兄がいない生活なんて、考えたことがなかった。結婚して、家を出て行くなんて、まだ先の話だと思っていたから。まだ、あと数年は、一緒にいられると…思っていたのに…。
「っ…。」
「!…え…菜月…?ど…どうした…?」
目が熱くて、頬に冷たい雫が伝った。
「ちょっ…おい、泣くなって…。これから永遠と離れるわけじゃないんだから…!」
「…お兄ちゃ…っ…本当に…行っちゃうの…?」
「…うん、ゴメンな?」
「っ…ん…。」
応援をしてあげたい。でも、送り出すのが、何か嫌で…。
「…もっと強くなって帰ってくるから。な?それまで待っといてくれるか?」
「…っうん…。」
「ん、ありがとう。」
兄は微笑んで、もっと私の頭を撫でてくれた。
「じゃ、行ってくるわ。」
「うん…気をつけてね。」
「おう。…ホントに、ありがとな?菜月。」
「…うん。」
「WC、絶対出場して、優勝しろよ?」
「うん、絶対する…!」
「ん、じゃあな。」
兄は玄関のドアを開け、家を出た。
「…」
涙を手で拭いて、しばらくそこに立ち尽くしていたけど、リビングに戻り、予選の準備をした。