第20章 紫色の…
彼の声を聞くのは、もの凄く久しぶりな気がする。
「どう…したの…?珍しい…ね…。」
「…いや、久しぶりに、声が聞きたいと思ってね。」
「…そっか…。」
彼は将棋を指しているみたいだった。
パチ…パチ…と電話越しに音が聞こえた。
「…」
「…」
会話が続かなかった。
「あ、あの…ね…。」
「うん?」
「む…紫原君に…会ったよ…。」
「…ほう…。敦は今、秋田にいるんじゃないのかい?」
「う、ううん…ストリートバスケ…の…会場で…会った…の…。」
「…そうか。」
「…うん。」
キセキの世代の中で、私は彼が1番苦手だった。1番最初に変わり始めたのは彼だし、キセキの世代のメンバーも、彼に従っていたから。誰も、逆らえなかったから。
「…ぶ、部活行かないとだから…もう切るね…じゃあ」
「菜月。」
「…な、何…?」
「…インターハイで、敦と大輝が試合に出なかったのは知っているか?」
「…え?」
「敦は僕が出るな。と言ったら出なかった。」
「…青峰君…は…?」
嫌な予感がした。
「肘の故障。」
「!…」
「高校生離れした力。まだ体が出来上がっていない状態で無茶をすれば、体がそれに追いついていけず、反動で体を痛める。」
「…何が…言いたいの…?」
「別に深い意味があって言ったわけではないよ。ただ、知っているのかどうか、聞いてみただけだよ。」
「…」
やっぱり…彼は苦手だ…。