第17章 夏合宿と…
「チーム力の向上が掛け算だとしても、5人の数値が低ければ、大きな数値にはならない。今誠凛に必要なもの。それは、選手1人1人の個人能力の向上よ。けど、勘違いしないでね。個人技を主体にしたチームにするわけじゃなく、あくまで束ねる力1つ1つを大きくすることよ。誠凛というチーム一丸で勝つために。」
「…」
「シュート、パス、ドリブル、1つ1つのアクションの質を向上させる。それにはまず、土台となる足腰よ。そのための砂浜練習!」
「っ…これ、普通の倍疲れるぞ…?」
「まずはここでいつものメニュー。の三倍よ?」
そう言うと、監督は上の服だけ脱いだ。
『えぇっ…!?』
監督はノースリーブの紺色のシャツを着ていた。
「さぁ、始めるわよ。地獄の合宿!」
そう言い、笛を吹いた。
始まった合宿。太陽が照りつける中、皆練習に励んでいた。
「暑いね、2号。」
「ワンッ!」
2号に話しかけると、返事をしてくれた。
「っ…!」
日向が水戸部にパスを出した。火神が水戸部を止めようとするも、砂に足をとられ、思うように動けていなかった。
水戸部が黒子にパスを出した。
「こっちだ!」
日向がそう言うと、黒子がバウンドさせパスを出そうとした。でも、見事にボールは跳ねず、砂に埋まった。
「あ…。」
「バウンドでパスしてどーすんだ黒子!」
ドリブルができないから、パスでしかボールを移動させる手段がない。