第16章 実力
「飴ちゃんいる?」
「結構です。」
「あー、そう。彼女は?」
「…大丈夫です。」
「あらら…。」
彼は黒飴を投げ、口に含んだ。
「どちら様ですか?」
黒子がそう聞くと、飴を舐めながら言った。
「木吉鉄平。」
「…」
黒子と木吉が見つめあった。
「木吉さん…ですか…?」
先に口を開いたのは黒子だった。
「この~木なんの木気になる木~の木に、大吉の吉で、木吉だ。」
「あぁ…はい。」
「!…ははっ…!」
いきなり歌いだしたので、私は笑ってしまった。
「おっ、ウケた。いいね、君。で、鉄アレイの鉄に、平社員の平で、鉄平だ!」
私は内心、凄く笑っていた。彼は変わり者だった。
「あの…何かご用ですか?」
それに対して黒子は冷めていた。
「君は面白い…!」
「…え…?」
「バスケってのは、ジェネラリスト、つまり、なんでもこなせるやつのスポーツだ。乱暴な言い方をすれば、パスを出せるスコアラーが、5人いればOK。まぁ、そうもいかねぇから、ポジションってもんがあるわけだし、スペシャリストはシックスマンにおいたりする、が、君ほど極端なスペシャリストは見たことがない。あそこまで徹底して、1つのことを極めたのは驚異的だ。」
すると、木吉はパスを取る構えをした。黒子は木吉にパスを出した。そして、木吉はボールをついた。
「君は、そこが限界って、自分で決めつけてねぇか?」
レイアップシュートを打った。
でも見事に外れた。