第15章 彼ら
水戸部がタッパーを開けると、ちゃんと輪切りになったレモンの蜂蜜漬けが入っていた。
「水戸部いて良かったぁ…!」
そう言い、次々に手が出てきた。日向が半泣きだった。そして隅で落ち込んでいる監督。
「…ん、黒子、いんねぇのか?」
「すみません、僕はいいです。」
「…」
私は黒子の隣で持ってきていた帝光中のノートをペラペラとめくっていた。
「黒子君、君は前半出ずっぱりだったから、1度引っ込んでもらうけど、栄養補給はしなきゃダメよ。」
「…あの、後半も、このまま出してもらえませんか?」
「え?」
「…」
私はノートをめくる手を止め、黒子の目を見た。
いつも真剣だけど、なぜか、いつにも増して真剣だった。
「確かに、青峰いて黒子無しはきちぃけど、てかいけんのかよ。」
「後半連続はねぇ…。」
「1試合フルには、ミスディレクションは続かないんだろ?」
日向が聞いたあと、伊月が言った。
「俺は反対だな。イーグルアイで見てたけど、もう随分効果が落ちてる。1度下がるべきだ。」
「……できます、いえ、やります。」
「…」(テツ君…?)
いつにも増して、真剣さはある。でもなぜか、冷静さを失っていた。
「…」
火神はジッと黒子を見つめていた。
「どうしても青峰君に、勝ちたいんです。」
「…意気込みは買うけどよ…。」
「っ…。」
怖かった。
彼を倒そうとすることで、黒子自身も変わってしまうのではないか。そう思った。