第15章 彼ら
日向がシュートを打つも、外してしまった。
「リバン!」
それを若松が取り、今吉に渡した。
「おぉっ!速ぇ!桐皇カウンターだ!」
「っ…。」
火神が抜けて、インサイドが完全に不利になってしまった。リバウンドが取れないのだ。
第2クォーター。残り5分。38対29と点差が開き始めてしまった。
「っ…頼む、もう少し堪えてくれ…!」
「落ち着け火神。もっとみんなを信じろよ。」
「わかってる…!ますよ…。桐皇は、全員一丸で倒す。」
「はい、出来たよ。」
「お、おう、サンキュ、菜月。」
「とりあえずこの試合はこれで問題ないはず…監督、どうしますか?」
「うん、完璧ね。行っていいわよ。」
「うっす!」
火神がTシャツを脱いで私に渡した。
「すまないわね。」
監督が言った。
「!…」
「本当は、万全でない選手を出すなんて、やりたくないけど、火神君がいないと、勝てないわ。」
「…」
「…全員一丸のバスケ。って言ったけど、そもそもそれは、ある人が教えてくれたスタイルなの。」
「ある人?」
「私だけの力じゃ、まだ未完成でみんなの力を引き出しきれない。挙句、怪我してる火神君に頼る始末。自分の無力さに、腹が立つわ。」
「あぁ…なんスかそれ。キャラ違うッスよ?」
「は…。」
「練習メニュー作って、スカウティングして、ベンチで指示出して、マッサージ。むしろあれこれ仕事しすぎ。」
「…」
「監督なんだから、どーんと構えてくんねぇと。試合中くらいわ。」
「…」
「つか、すまないわね。で送り出されてもテンション上がんねぇから…です。」
皆が微笑んだ。