第15章 彼ら
会場に入ると、声が聞こえた。
「おー!来た来たぁ!」
「誠凛と…桐皇学園…!」
歓声が沸き起こった。
そして、何かに気づいた火神が、近くの選手に話しかけていた。
「あの、青峰はいないんスか?」
「遅刻だよ。あの自己中野郎…。」
「なっ…!?」
「!…」
「え…。」(遅刻って…。)
「すまんのぉ、アイツおらんとウチも困るんやけど、後半あたりには来るて。ウチらまあ、前座や。お手やわらかに頼むわ。」
「青峰君…後半から…。」
私はタオルを持ったまま、俯いた。すると、タオルが少し暗くなった。誰かの影が映った。
「!…」
急いで顔をあげると、さっき喋っていたメガネの人が立っていた。
「アンタ、可愛い顔してますなぁ?」
「え…わっ…!」
脇の下に手を入れられ、抱き上げられた。
「おぉ~!軽い軽い、まるで小さい子やなぁ。」
「はっ…離して…ください…!」(この人もしかして…桐皇学園の…主将…?)
目が開いていないように見えた。
「すみません、彼女、俺らのマネージャーなんス。離してもらってもいいッスか?」
火神がそう言った。
「おぉ、すまんなぁ。珍しく、可愛い子が来たと思ったら、ついなぁ…?ゴメンな、お嬢ちゃん。」
そう言い、その人は私を降ろしてくれた。
「い、いえ…大丈夫です…。」
「い、今吉さんがナンパ…。」
「あ、お嬢ちゃん、俺、今吉翔一。お嬢ちゃんは?」
「え…あ…佐野です…。佐野菜月。」
「!…あぁ…!青峰と桃井から聞いたことある名前や。って今思ったら、アンタが菜月?」
「え?」
「青峰から言われたでぇ?菜月には触んな。ってなぁ。」