第15章 彼ら
「菜月。」
「…何?」
名前を呼ばれ、立ち止まった。
「…ちょっとこっち来い。まだ話は終わってねぇ。」
「…ゴメン、先…行ってて…大我君。」
「でも…。」
「長くなりそうだし。それに、その足、早く休ませないと。」
納得がいかないような顔をしていたが、相当足が辛かったのか、頷いてくれた。
火神の背中を見つめ、私は青峰のところへ戻った。
「お前、中学んとき、最後の最後まで部活続けてたろ。あれ、なんで辞めなかったんだよ。」
「…逃げたく…なかった…。」
「…」
「紫原君が、赤司君に1on1挑んだとき、私は…最初から見てたわけじゃなかったから、よくわからなかったけど、紫原君が赤司君に負けたとき、皆の空気が変わったのだけはよくわかった。」
私は手を握って握り拳を作った。
「今、私はバスケが好き。でも、中学の時、皆が練習をしなくなった時から、私はバスケが嫌いになった。個性があるのは、それぞれの良いところなのに、楽しくなかったら、勝ったって」
「お前、何か勘違いしてんじゃねぇの?」
「え…?」
「楽しいとか楽しくねぇとか、関係ねぇだろ。」
「っ…。」
今の彼は、きっと何を言っても、聞く耳を持ってくれないだろう。
「…ゴメン…。」
「俺にはお前が必要だ。」
「!…」
「俺のとこに来いよ、菜月。」
「さつきがいるでしょ?」
私は足元にあったボールを拾った。
「…ちゃんと部活サボらずに行ってる?」
話題を変えた。答えなんてわかっているけど、違うことが話したかった。
「行ってるわけねぇだろ。」
「…そうだよね。」
私はボールを見つめた。