第2章 黄瀬と灰崎
「え、マジ?うっわ…なんかダッサァ…。」
「つーわけだから、じゃあな、涼太く」
「涼太!!」
「!…」
絶望的な顔をしている黄瀬の目が見開いた。
私が黄瀬の名前を呼んだのだった。
灰崎や、その女子も止まり、また黄瀬を見た。
「菜月…お、おいっ…。」
青峰が私を呼んだけど、無視して黄瀬に近づいた。そして、そばに行き、しゃがんだ。
「おい、菜月、テメェ…何してんだよ。」
灰崎の声も聞かず、私は黄瀬に微笑みかけた。
「お疲れ様、もうちょっと練習が必要だったね。」
「!…」
私を見ると、絶望的な目は、普通の目に戻った。
「菜月…っち…。」
「お、おい…マジかよ…。」
「菜月って…声荒げる人だったか?」
「い、いや…違うだろ…。」
ヒソヒソと噂をし始めた部員達。
タオルを渡すと、それを受け取り、立ち上がった黄瀬。
「ありがど…ッズ…。」
そう言い、黄瀬は私を抱きしめ、泣き続ける。
「…」(相変わらず…身長高い……。)
うっすら微笑みながらそう思った。黄瀬に抱きしめられると、後ろからじゃ、私は完全に見えなくなってしまう。灰崎からは私の姿は見えなくなった。
黄瀬は汗だくだったけど、灰崎の彼女みたいに、私は汗だくで触ってほしくない、だなんて思わないし、まぁ…少し拭いてほしいとは思うけど、今はそんなこと気にしない。
背中に手をまわし、背中をさする。
「お疲れ様、次は、もっと頑張ろうか。」
そう言うと、泣きながら頷く黄瀬。