第13章 道のり
「けど、消えたり飛んだりするわけじゃないわ。相手は同じ高校生よ。フェイクにもかかるし、不意を突かれればバランスも崩れる。やってるのは同じバスケット。いつもどおりやれば、ちゃんと通用するわ。まだテンパるところじゃないわよ!」
ピピーッ!
「火神君…。」
「ん?」
「!…」
呟いたつもりが本人に聞こえてしまっていたらしい。わざわざ戻ってきてくれた。
「何?どした?」
「あ…。」
「…フッ…なんて面してんだよ。だいじょーぶだって。」
クシャッ!と私の頭を撫でた。
「!…」
「行ってくる。」
「…頑張れ…!」
「おうっ!」
再開した試合。
津川を抜いた火神。ゴールまで一直線。
何か思い出しているようだった。
*
「この試合は、先輩達が過去を乗り越える、大事な試合だと思うんです。だから…。」
「俺はバスケ嫌いになったりとかはしねーし、全部は理解できねーけど、最後の言葉だけはわかったぜ。」
「だから…改めて思いました。この試合、絶対…勝ちたいです。」
*
「うおおーーらっ!!」
『!?…』
「…凄い…。」
鳥肌がたつ…。本当に…彼を見ていると…。
ビリビリと…頬に伝わる感覚。キセキの世代の皆が変わってしまってからは、感じることのできなかった感覚。
自然と、笑みがこぼれる。
「!…」
監督も驚きながらも喜んでいた。
「…」(やっぱ……凄いよ……火神君…。)
「やったー!」
誠凛の皆が喜んでいる。
「!…」
でも、私は笑みがすぐに消えてしまった。
津川の表情を見たから…。
ゾクッ…!と、今度は嫌な鳥肌に変わった。