第10章 少しずつ…
「…よく見てるよな…。」
「誰だってできるよ、こんなことなら。」
「は!?お前の観察力は普通の人と同じじゃねーから。つか、体力とかまでわかるとか…。」
「ウチの監督もできるよ。」
「…どうなってんだよ…。」
「菜月さん。」
「!…菜月じゃねーか。何してんだ?」
背後から声が聞こえ、私は振り向いた。
「!…テツ君、火神君。」
「よっ!」
「!…お久しぶりです、佐野先輩。」
「わっ!…あ…黒子テツヤ。」
「どうも。」
兄が黒子を指さしてそう言うと、黒子は頭を軽くさげた。兄は黒子を認識するのに数秒かかった。
「誰だ?」
「帝光中の時にお世話になった2つ上の先輩です。佐野俊太先輩。」
「へぇ…。うっす…。」
火神も軽く頭をさげる。
「…ノートに書いてあった人?」
「そう。火神大我君。」
「…」
顔から下へ、順々に見ていった。足に目をとめると、また火神の顔を見た。
「…黄瀬にはギリギリ追いついていってるくらいか…。」
キセキの世代の皆が高校に入っても、ちょくちょく試合を見に来ていたらしい。
「…なんでわかるの?」
「…だいたい?」
「お兄ちゃんもじゃん…。」
「菜月、お前の兄ちゃん、バスケ強ぇのか?」
火神が聞いてきた。
「…強い…よ…?アメリカに推薦されるくらいだから。」
「!…へぇ…面白ぇ…。」
目を輝かせる火神。
「…でも、勝負するのはやめといた方がいいと思う。」
「んでだよ。」
「相手にならないと思う。」
「はぁ!?」
「ククッ…。」
それを聞いて笑う兄。
「日本のバスケなんか、どれも同じって思ってるでしょ?」