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専属カメラマンにならないか?

第1章 *




「何がです?」
「確かにすごく綺麗なんだけど、何かこう…作った感じがして。壁というか、人工的というか、うーん…」

撮ったデータをパソコンで確認し、カメラを大切に抱えながらカメラマンは唸る。その言葉に俺は弾かれたように顔を上げるが、カメラマンの女性とは視線は合わなかった。彼女は指示を飛ばしていた男性と難しい顔をしてうんうんと唸っている。ひとしきりデータを見た後、彼女は意を決したように覚悟を決めた顔で俺の前に立った。視線が合うと、彼女は強い眼差しで正面から俺を射抜く。その強さに惹かれていると、柔らかいものが両頬を包んだ。

「…うん?」
「ちょ、何してるんですか!?」

包んだかと思ったら、むにむにと頬をマッサージされるかのように揉まれる。流石にびっくりして彼女の顔を見返すと、強い視線はそのままに優しい表情をしていた。その慈愛に満ちた表情に、すとんと肩から力が抜ける。彼女の後方であわあわと慌てる男性を置き去りに、彼女はそのまま言い募る。

「三条さん、笑顔、やめましょう」
「うん…?しかし、そうすると無表情になってしまうぞ」
「人工的に作った笑顔で全部仕舞い込んじゃうなら、無表情のがずっとマシです」

言われたその言葉に、何も返せなかった。

「あなたはたしかに綺麗だし格好良いけれど、私は完璧な芸術品を求めてるわけじゃあないんです。三条さんだって、作った自分よりありのままの自分を認めてもらいたいでしょ?」
「…………」
「今までのカメラマンはきっと上辺のあなたを撮ってくれてた。なら、私はあなたの素顔を撮りたい」


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