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専属カメラマンにならないか?

第1章 *




「ねえ見た!?三条宗近やばくない!?」
「雑誌で特集組まれてたイケメンでしょ!?チョー綺麗だし格好良いよね!まじ理想!」
「しかもさ、使われてる写真がすごい良いよね。なんて言うか、自然体って感じ!笑顔も作ってないの!」

繁華街を抜け、俺は今日も事務所へ顔を出す。最近ではメディアへの露出も多く、バレないように服装や髪形を変えなければいけなくなった。確かに面倒だが、そうも言っていられない。事務所の扉を開けて朝の挨拶もそこそこに、俺はスタッフと話し込んでいた小さな姿を見つける。自然をあがる口角をそのままにそっと忍び寄り、その華奢な背をぎゅっと抱き込んだ。

「わっ!?」
「おはよう。今日も愛らしいな」
「ちょ、三条さん!?挨拶代わりに抱き付かないでください!っていうか気配消さないでください!びっくりします!」
「そうかそうか、俺の挨拶で驚く姿も愛いなあ」
「…っもう!からかわないでください!!」
「はっはっは」

他のスタッフは、いつもの光景だと呆れ半分に見守ってくれている。耳まで真っ赤になった彼女こそ、俺を劇的に変えてくれたカメラマンだ。あれ以来彼女に撮ってもらう機会は多く、そのすべてが今までにないほど生き生きとした姿で反響を呼んでいる。今や売れっ子カメラマンとなった彼女だが、それでも繋がりを大切しているらしく連絡すればちゃんと来てくれるのだ。

今日は俺はオフだから、彼女とデートをしよう。そう思って呼び出した。だから用もないのに事務所に来たのだ。今日こそ告白をして、この愛らしく愛おしい彼女を自分だけのものにするのだ。その前に。ポケットの上からパスケースをそっと撫でて、彼女へと囁く。

「なあ、俺の専属カメラマンになる気は無いか?」

俺の大事なパスケースの中には、あの日記念に一緒に撮った写真が大切にしまってあると、いつ打ち明けようか。


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