第6章 体育祭
『ど…どうしたの…?』
なんでそんなに怒っているの…!?
状況把握出来ず
蛇に睨まれた蛙の神奈
「ッ来いや」
『うおっ』
グンと腕を引っ張られ
引き摺られる様に連れて行かれる
群衆の向こう側で
心操君の声が聞こえた気がした
どれくらい引き摺られただろう
もう廊下ですれ違う奇異なものを見る目には慣れてきた
『…あのさ…どこ行くの?』
「うるせえ黙ってろ」
うーん暴君
『…せめて師匠に一言、連絡入れていいかな…?』
「……」
少し眉が動き
無言の返事をする爆豪に
神奈は掴まれていない方の手で制服のポケットを漁る
一緒に入っている飴ちゃんをポケットから逃がさない様に
慎重に携帯だけを出し、師匠の電話番号を探す
師匠は意外にもラインを入れているのだが
仕事中に開くわけもないので
唯一通る電話にコールする
数度同じ音を繰り返し
音が途切れ、師匠の声が耳に心地よく響く
「なんだい?」
『あっ師匠、すみません。今日そちらに向かうのが遅くなってしまいそうで…』
「珍しいね?分かったよ」
軽く受け入れられそこで終わろうとしていた、その時
爆豪が私の携帯を強奪し
電話の向こうの師匠に声を掛ける
「こいつ今日は借りる」
『なっ!!?』
電話の向こうで「まあまあ若い子は良いわねぇ」などと聞こえた気がした
爆豪は「んじゃ」と軽く言い、携帯を無慈悲にタップする
『ちょっと!!何勝手に…!!』
「黙れっつてんだろがブス」
『ブッ、ブスって言った!!?これでも毎日キレイになれるよう努力してんのよ!!?』
ブス発言で頭に来た神奈は本筋から逸れた反論をしだす
「そう言うの、無駄な努力っつうんだよ」
『無駄じゃないもん!少しずつキレイになるんだもん!トイレ掃除だって毎日やってんだかんね!!?』
「迷信に振り回されてんじゃねえか」
やっぱバカだなお前、と
バカにするように
髪を乱雑に撫でられる
嫌味に笑う爆豪に
一瞬ドキリとしてしまい
次の反撃手立てが頭から抜け去る
『ッ……』
私は心の中で
『反則だろ…』と毒づくが
彼には勿論
届かない