第4章 サイレン
『はい。一人は黒いもやの様な見かけをしていました。…私が2階へ落ちた時、気付いたら目の前にいて…おそらく瞬間移動か……いや、そういえばそのもやにもう一人の男が身体を、通している…?入って行っているような光景もみました』
「ということはワープゲートみたいなものなのかもしれないね」
「いいや、それならわざわざシェルターを壊す必要ないじゃないか」
「それは混乱を招くためにやったのかもしれない」
「なぜ混乱を?」
「混乱に乗じて何かするつもりだったんだろう?例えば、良い個性の生徒の誘拐とか…」
「ちょっと!」
「あぁ!すまん…君の前で……」
『……いえ、大丈夫です』
「ごめんね?我々も、君を頼るしかないんだ…」
校長の言葉に神奈はしっかり頷いた
『もう一人、男がいました。そいつは…妙な見かけを…妙にリアルな複製品の手を、身体の節々に着けていて…そいつの個性が、先生方も仰られた通りのものだと思います』
「直後にこんな事情聴取をして…申し訳ない。だが君のおかげで次への対策が立てられそうだよ、ありがとう。」
「…今の話を聞いて、咄嗟に嘘を言えたのはいい判断だったね。もし本当のことを教えていたら、君はきっと、そのモヤに連れ去られていただろう」
『ッ…』
ゾッとした
「当分君には護衛をつけるよ。あと、悪いんだけど、寝泊りはミッドナイト先生の家で行ってもらう。必要な荷物は今日中に運ばせるから」
『ありがとうございます…』
「だから、私の仕事が終わるまで学校に居てもらわないといけなくなるわ」
『分かりました』
「…不便があったらいつでも言ってね」
「じゃあ先生方はこの後また会議室に集まってください」
「はい」
先生方は口々にねぎらいの言葉を掛けて
ゾロゾロと保健室を去った
「私も行くね?何かあったらすぐ呼ぶんだよ?」
『はい』
そして保健室に一人になった途端
こらえていたものが
溢れだした