第4章 サイレン
その嗚咽は廊下にまで届いていた
「……気丈に振舞っていたが、やはりまだ子ども…」
「死に目に遭って、平気でいられる方がおかしな話よ」
「…だが、彼女の対応力、敵に対してもそうだが、我々に対しても、我慢して、割り切って、端的に分かり易く情報開示してくれた…優秀な子だよ、まったく」
「あぁ、おかげで対策がすぐに練れそうだよ」
「これ以上、生徒に危害が加わらない様に……」
ひとしきり泣き
外の空気を吸おうと
神奈は保健室から出る
そしてちゃんと
人気の多い場所を選んで歩き
中庭に出た
こんな泣き腫らした目
誰かに見られたくはないが
人気のない所に何て
足がすくんで行けっこない
仕方なしに中庭の人工芝に腰を降ろす
あれ、そういえば今、何限だ…?
ふと思い、辺りを見渡せば
周囲は既にカバンを背負い、壊された校門とは別の出入り口の方へと向かっていた
午後の授業…出られなかったのか
明日心操君にノート見せてもらおう…
そんな事を考えていた時
「おい、唾液女」
振り返ると
いつもの怒った顔をした
彼がいた
彼を見ると
なぜだかまた涙が滲みそうになる
『だから…唾液女じゃなくって、神奈だって』
潤んだ目を隠すように笑ってみせるが
爆豪がそれを見逃すことはなく
爆豪は神奈が練習場に来なかったことを
問い質す気でいたが、彼女の身に何かがあったことを悟り、怒りは失せ、ただただ心配になった
「…何があった」
その言葉は普段とは違い
優しさに満ちていた
その声音を聞くと
塞き止めていた感情がまた
溢れだした
嗚咽を零しながら泣く神奈を
爆豪は優しく包み、割れ物を扱うように、背中をさすった
その後、泣き止んだ神奈は爆豪に食堂の後に起こった出来事を大まかに話し
爆豪はただ無言で
ミッドナイトが来るまで一緒に居てくれた
その間も彼はずっと
私の背中を優しく撫でてくれた