第4章 サイレン
『ほんと…ヒーローみたいね、爆豪」
「…てめぇは……何回倒れかけりゃあ学習すんだよ」
悪態をつきながらも
爆豪の腕は、私がこれ以上流されない様に
しっかりと腰に回されていた
その後、一人の生徒によって
その場は鎮められることとなった
はらはらと席に戻る者や
そのまま食堂を後にするものたち
そんな中、未だに腰に回された筋肉質な腕に
だんだんと恥ずかしさが込み上げてくる
爆豪の体温に意識が行くようになり
はじめて、その顔がすぐそばにあることに気付く
『…あ、あの…そろそろ放してくれても…』
「あ?」
あぁ、きっと爆豪からしたらこんなハグ紛いのことも
日常茶飯事で、取るに足らない様なもんなんだろうな…
自分だけ赤面して、狼狽えていることが
余計に恥ずかしさを助長させた
一方爆豪は、そんな神奈を見て加虐心が擽られ
より彼女の華奢な体を引き寄せて
「神奈」と耳元で囁く
すると彼女は耳まで真っ赤に染め上げ
耐えられず目を瞑った
可愛い
なんて、自分に似合わない言葉を想起させ
俺はここが食堂であることすら忘れ
気付いたら徐々に神奈に顔を近付けていた
「何してんだ変態」
ムードを壊す様に
忘れていた奴が割って入る
「…てめぇ……」
やっと解放された神奈は
床にへにゃりと座り込み、放心状態に陥った
「アホか、場所と状況を考えろ。というかそうでなくとも、神奈に手ぇ出すのは許さねぇよ」
そう言いながら心操君は私に手を差し出してくれる
その手を今度こそ掴み、立ち上がる。
私は先程の出来事を思い出し
また赤面する
何を想像した…?
引き寄せられる腰に
近づく顔に…
居ても立っても居られなくなり
『わっ、私先教室帰る…!!」
「えっ…」
二人を置いて走って食堂をあとにした