第12章 再起
突然告げられた言葉は、知っていたもののはずだったが、まるで初めて聞く言葉のように思えた。
『な、え…ど。………え…?』
「二度言わすなって前にも──…あークッソ覚えてねえんだったなァ」
混乱が神奈の頭を支配する。
「テメエは記憶ごと失くしてっがなァ、コッチは体育祭の前に約束してンだよ」
『何を?』とは言葉にできなかった。代わりに表情が代弁し、爆豪が仔細を語る。
「ココに連れて来ること。そんであン時の返事をもらうってよォ」
『返事……?』
「さっき言った言葉と一緒だ。返事出来んならさっさとしやがれ」
つまり、私が爆豪を好きかどうか──
それを今返事しろということか。
『そ、そんな急に……ッ』
急に言われても、と言いかけ止めたのは、これが彼にとっては急ではなかったからだ。
『……ッ…』
言葉に迷う。
しかし気持ちには、──迷いはなかった。
『……ごめん、好きかどうかはまだ……分からない』
「……」
言葉を発した瞬間、息苦しさと込み上げる何かがあった。
これは身体が、失くした記憶を覚えているから?
記憶があれば私は、違う回答をするつもりだったの…?
失くした今、答えなんて誰も分からない。
俯く神奈は様々な感情が錯綜し爆豪の顔を見れなくなった。