第12章 再起
確かに爆豪には返しきれないほどの恩がある。
キス紛いのことをされても、全く嫌ではなかった。寧ろ──…。
──…彼と過ごす時間はありのままでいられた。
取り調べで張り詰めた気持ちが彼の顔を見るだけで和らいだ。失くした記憶の中で仲良くなっていた人達が、その溝を埋めようとたくさんお話ししてくれた。だけどどこかで緊張してしまう自分がいた。アナタといられた時間だけが、本当の意味で私に休息を与えてくれた。
──…何度もその顔には似合わない溶けるほどの優しさに触れた。
自暴自棄になる私を立ち上がらせてくれた。トラウマを乗り越えさせてくれた。一人軟禁されていた部屋にアナタが来てくれた時、どれだけ心が救われたか。
勉強を教えるアナタは、言葉と態度は激しいものなのに、その含意はいつも私を慮るものばかり。
さっきだってそうだ。
自分でも気付かない内に、決められた将来を歩むことへの不安があった。
でもアナタが違う道もあると示してくれたから、今はもう何も怖くない。
私は確実に、アナタに惹かれている。
そして耳を紅く染め決死の告白をしてくれたアナタの、気持ちの深さも理解している。
──…だからこそ。
だからこそ、今の中途半端な気持ちで応えることはしたくなかった。
“好き”というものを中学以来してこなかった私には、まだこの気持ちに確信が持てていないから。
失くした記憶の中の感情を見つけ出せたら、今度は私からちゃんと言わせて欲しい。