第12章 再起
いつだってテメエが、俺を狂わせる。
柄にも無え恋やら愛やらを、思わず口に出してしまいそうになる。
ただ神奈が微笑むだけで、何にも代え難い宝物を貰ったような気持ちになる。
人目を憚らず、想いのままに荒く口づけしたくなる。
テメエは考えたことも無ぇんだろうな。目の前の男がどんな劣情を抱えてそこに居るかなんてよ。
だから簡単に、未来を仄めかすような言葉も吐けんだろうな。
だから…自分がどんな顔して笑ってるのかなんて知りもしないで、簡単に見惚れるほどの笑顔を振りまくんだろうな。
お前の記憶にはもう残ってねぇんだよな。
あの日の約束は──…。
ガタンと席を立ち上がると、猫達が一目散に身体から飛び降りた。
床が揺れるほど地面を踏み締め、神奈の眼前に仁王立ちする。
大きく、大きく、息を吸う。
それを吐き出すと同時に、ゆっくりと神奈を見据えた。
「お前が好きだ。付き合って欲しい」
『………………はい?』