第12章 再起
要は、彼女が将来どこかのヒーロー事務所に属することなく、国が管理できる場所に留め置くための施策に過ぎない。彼女の個性をどう使うかを、国が握れるような立場に追いやるための。どこかの事務所・組織に、彼女の使い道の主導権を握られないためにも。
それはかねてより懸念していた事柄の一つだった。
彼女の個性が公のものとなり、彼女の存在が公のものとなった今、彼女の抱く罪悪感を利用して国が丸め込もうと動くこと。誰だって喉から手が出るほど欲しい個性を、国が所有権を握ろうとするのは分かっていた。
それが即ち、彼女にとっての不自由に繋がるということも……。
これから先の道は、彼女の意思とは関係なく、彼女のいない会議で決められたレールの上をただ歩かされる。
それがどうしても、気に食わなかった。
「…おい、神奈」
『…?』
「嫌になったら、辞表出して俺の事務所来い」
『…爆豪の…事務所……?』
「あァ。卒業して、大手事務所入って、数年で独立して事務所立ち上げる」
『す…凄い夢だね』
「夢じゃねえ、実現可能な事実だボケ!!」
『──っ』
自信過剰でも、根拠薄弱でもなく、まごうことなき俺の未来だ。
出来ればその隣には、無邪気に笑ったコイツが居て欲しい。
国に使われても神奈が幸せならそれでいい。
決められたレールの上であっても、神奈が生きたいと思うのならば何も言うまい。
でももしそうじゃなかった時。
窮屈さに押し潰されそうになるのなら、俺が助けてやれる居場所を作る。
だから決して、“今”、将来を悲観しないで欲しい。
テメエの運命なんざ俺が、如何様にでも変えてやれるということを、ちゃんと分かっていて欲しい。
『ふ、ふふ…っ』
女が口元を押さえて無邪気に笑う。
『爆豪の事務所なら、きっと毎日が慌ただしくなるね…!』
「──ッ!」
大好きな笑顔がそこにはあった。
胸が締め付けられる笑顔がそこに。
どうにもこの顔を見ると、なんでもしてやりたくなっちまう。
「〜〜〜〜あァ、クッソ!!!」