第12章 再起
猫を全身に乗せながら、翌日に迫った入寮に期待と不安が入り混じる。
ただでさえ半分野郎(轟のこと)が神奈を慕っているというのに、これ以上コイツの無防備な姿を他の奴に見られでもしたら、一人や二人のライバルでは済まなくなる。それが気が気ではなかった。
『あと、爆豪にはまだ言ってなかったけど、私ね、放課後これからはヒーロー事務所でアルバイトすることになったんだ』
「バイトォ?」
『そ、翔の脚を治したことが警察側にも知られてね。取り調べと同時に個性が実用可能かどうかを試されて。そこでOKが出たから、卒業するまでの試運転として医療行為専門のヒーロー事務所でお世話になることになったの』
「試運転っつっても何やんだよ。個性使うには仮免いんだろが」
『それが…国から特別に許可を貰って、書面上はもう取得してることになってるの…』
申し訳なさそうに、周囲には聞こえない声でそう告げる神奈。
『…一日でも早く個性を完璧に使いこなせるよう経験を積んで、最終的にはヒーロー公安委員会のメンバーとして働いて欲しいって……はは、なんか飛躍し過ぎてよく分かんないんだけどね』
眉尻を下げ乾いた笑いを零す神奈に、こちらは眉間の皺が深くなる。
分からないと誤魔化す目の前の女も、きっと分かっていてその話に乗ったのだろう。