第11章 償い
その後、看護師さんに運ばれて
神奈は自身の病室へと送り届けられ
翔と爆豪だけが彼の病室に取り残された
どこか気まずい空気を破ったのは
意外にも爆豪の方で
「…お前、本当に消えてたらどうしてたんだよ」
呆れ交じりに爆豪は翔に問う
すると翔は「フ…ッ」と含み笑い
「何笑ってんだテメエ」
「ごめんごめん、気を悪くしないで」
大仕事を終えた翔は
どこか少し子どもっぽくて
どこか少し、意地が悪い
「消えないよ、僕はね」
「もしもの話だっつってんだろが。話通じねえのかテメエはよォ」
「それは君の方さ。僕は絶対に消えないんだよ。神奈の個性では、絶対にね」
「あぁ!?」
翔はスッと、動く方の手を
隣にあったコップにかざす
すると中の水が重力に逆らうように持ち上がった
「僕の個性は“水を自在に操る”個性」
爆豪はまだそれだけの情報では求める答えまでは辿りつけず、ただ黙って次を待つ
「じゃあ神奈の個性は?」
「テメェおちょくってんだろ」
薄ら笑う翔に爆豪はイラつきながらも
渋々、「復元」と答える
「そう、復元…それも“体内の水分”を使っての復元だ」
「!!」
その言葉を聞いてやっと、点と点が線になる
「そうなんだ。要は神奈の個性使用時に消費される体内の水分を、こっちでコントロールすることができれば、微調整の主導権は僕が握れるのさ」
「だから結論として僕はあの時、絶対に消えることはなかったんだ。まあ、その必要もなかったんだけどね」
したり顔で笑う翔とは反対に、爆豪は苦虫を潰したような表情になる