第11章 償い
「覚えてるかな、猫の…ミーのこと」
『…もちろん』
「君を、すごく傷つけてしまった」
突然語り出す昔の話
互いにとっての苦い記憶
爆豪をチラと見遣るが、思索の素振りはなく
そんな過去ですら、既知のものだということを
表情が語っていた
どこまで私は、彼に話して、頼っていたのだろうか
「無理に個性を使わせなければって、ずっと後悔してたんだ。神奈の個性は、とっても貴重なもので、多くの人を救う使命にあるものなのに…。僕が、その足を引っ張った」
『そんな風に言わないで…』
声が震える
私のせいで、貴方を苦しめているというのに
「脚を失くして思い至ったんだ。君の為に…僕に出来る、最後の贖罪」
『……え…?』
「この脚を、元に戻して欲しい」
『ーーッ』
「たりめェだ。そん為に引き摺ってきてんだよ」
隣の男は無茶を言うけど
神奈…君には酷な願いだというのは重々承知してるんだ
だけどこれは自分の為じゃない
君に捧げる、僕の命を賭けた一世一代の大勝負
震える君の手を強く握るよ
小さくなるその背中を包み込むよ
怯えるその瞳を 真っ直ぐ見つめるよ
ねえ、神奈
助かるはずもなかったこの命を、もう一度、君の為に使わせて欲しい。
でも失敗はさせない。
絶対にしないよ、大丈夫。
僕はずっと、ほんとにずっと、君を見てきたから知ってるんだ。
君は、君が思っているよりもずっと強い人で、たくさんの人を救ってきたって。
だらかもう一度だけ
君に言わせて
お願い…
お願いだよ、神奈…本当に、本当にこれで最後にするから…
どうか僕に、神奈のトラウマを失くさせて
「どうか僕を
もう一度、信じて」