第11章 償い
翔が社会の深淵に足を踏み入れて
改めて思い知った神奈の重要性
思えば病院で声を掛けられたのも、神奈と僕の関係と
僕がどういう経緯でこの怪我を負ったのかと…
全て繋がっていたんだと思う
政府にはあるリストが存在する
そこには国家資産に値する重要な個性を持つ者たちが並べられ
その中には、“凪山神奈”の名前が記されていた
リストの人物は、個性届けを出した時から監視対象となり
敵となり得る可能性があれば即座に対処され
反対に、社会のために振るわんとするならば、その道筋を立てる
例えば彼女の雄英合格もまた、必然ということ
彼女は個性が発現したその時から
既にヒーロー社会のひと席を
知らずの内に獲得していたのだ
それが
彼女が望む最良の席かどうかは、関係なく
彼女の個性は将来、社会のために振るわれること
それは絶対の決定事項
裏で手引きせずとも、自ずとヒーロー社会にやってきた神奈
リストに載る他の強大な個性の持ち主達の、大半はそうであるように
そして
リストの中でも“最重要”に値する“凪山神奈”は
彼女の為にエージェントを数名犠牲にするのも厭わぬほど
必要不可欠なのだ
社会はどう転んでも
“凪山神奈”を必要とする
たとえ一握りの不安要素があったとしても
「神奈は失ってはいけない存在なんだ。」
そう零す翔の瞳は
どこか翳りを帯びていた