第11章 償い
それは自然と、ポロポロと音を立てて溢れていた
視界が揺らぎ、またハッキリする
もうダメだと思っていたものが
取り戻せはじめている
その一端に触れられた
言い様もない高揚が小さな体躯を駆け上がる
『ッーー…』
「神奈の『復元』ほど完璧に元通りにはならないけど、病院の先生がここまで動かせるようにしてくれたんだ。超人社会様様だね」
無邪気に微笑む彼の姿を
本当に久しく目にした
「神奈には本当に、余計な重荷を背負わせてしまって、申し訳なく思ってるんだ」
『っそんな事…!』
だって、私があの時
あなたを治せてさえいれば
今も、今までも
ずっと昔のまま
あなたが不自由を強いられることも
あなたの人生を早くに決めさせることも
命を懸けさせることもなかった
『私があの時…ッ、ちゃんと戻せてたら……!』
「神奈」
胸を占める贖罪の想いを悟った翔は
少し強い口調で、思考を遮るよう呼び止める
「僕の人生は、僕が選び取った、僕の道だ」
強がりでもなんでもない
ましてや私を慮るため発されたものでもない
彼の、心の底からまろび出た本音
翔がこんなにも感情的に言葉を発するのも
久しく見たことがない
いや、寧ろ、初めてーー…
「君を恨んだことも、自分の人生を嘆いたことも、僕は一度だってないよ。あの時君を庇えたことは僕にとっての誇りだし、こうなることが分かっていても、何度だってそうする。片腕が動かなくなったって、今の時代どうにでもなるよ。命には代えられない…ましてや、君の命には……」
私を救うための言葉ではないと
そう物語るような強い意志を孕む瞳
真っ直ぐ射抜くそれにビクリと怯み
自身の今までの烏滸がましさに恥ずかしさすら感じる
「君の命は、君だけのものじゃない。
僕は、君の個性を知った時から、命を賭けると誓っていた。そういう使命を授かったんだ。そしてそれが、そのまま僕の誇りなんだよ」