第11章 償い
「ヴィランが神奈の情報を集めているということは、起こることは想像に難くない。
小さい頃ずっと一緒だったからね。そういう輩はよく知っている。」
神奈と爆豪の頭にも、
同じ“誘拐”の文字が過ぎる
「だから僕は自分から志願したんだ。潜入捜査を。殺される覚悟もしてた。
というか、きっと最後はそうなるだろうと思ってたけどね。」
まるで
僕なんかがいなくなっても
世界の誰も、気付きはしないとでも言うように
彼は平然と心境を語る
『そんな…っ』
血が滲むほど、また神奈は拳を握る
けれど言葉を続けないのは
その原因が自分にあるからだ
現に神奈の元から姿を消した後の
彼の動向も、ましてや生死すら
神奈は知り得なかったのだから
爆豪もこの時は
ただ黙って聞くしかなかった
部外者が口を出すもんじゃない問題
たとえ隣で愛する者が苦しんでいようとも
今だけは、共に苦しみ合うことが大事なんだと
共に拳を握りしめ、口を出したくなる衝動を抑える
しかし
救いの手は
思いの外、簡単に差し出される
「そんな顔をしないで、神奈」
動かないはずの腕を持ち上げて
動かないままの手を神奈の頬に擦り当てる
『……え…』
「スゴイでしょう?手はまだ動かないけど、腕はほら」
いつも垂れ下げていただけだった腕を
翔は事もなさげに
だけど少し歪に、動かして見せる