第11章 償い
衰弱しているはずの翔は、ゆっくりと上体を起こし
ベッドの隣に置いているお水を慣れた手つきで片手で注ぐ
喉を潤し、一息吐くと
こちらを見遣り
「えっと、爆豪くんは…はじめまして」
力なく笑い掛けるが、爆豪は「ハンッ!!」とそっぽ向く
「まあ、僕は一方的に君のこと知ってるんだけどね」
自嘲気味にそう漏らす翔に、爆豪はその根本理由を
躊躇うことなく問いただす
「テメエ、本当にサツなんかよ」
その問いに翔の笑顔は消え、顔つきが変わる
オール・フォー・ワンがみんなの前で告発した
翔は、警察の犬だったと…
そんなことは、神奈は一言も聞いたことがなかった
翔は熟考した後、決心したように真実を語り出す
「そうだよ。数年前からね…。
正確には、警察の手伝いをしてるんだ」
『…っ』
動かない方の腕へ視線を遣り、翔は平然と話を続ける
「腕の件で入院した先で出会った人がいたんだ。その人のお誘いでね。僕の個性を買ってくれてた。
具体的には……まあ、ちょっと公には出来ないような任務にあたってて…。
そこで偶々、敵連合が神奈のことを探っていることを知ったんだ」
神奈の知り得なかった翔の“その後”が
優しい声音で、淡々と語られる