第10章 白紙
「うるせえよ、いっぺん黙れや」
耳障りでしゃあねえ
それ以上”神奈”を傷付けんのは、たとえそれが本人だろうが許さねえ
「言っとくが俺ァなあ、てめえに個性がなかったらって何度も何度も考えてたんだよ」
そしたらお前は辛い思いも、危険な目にも合わなくて済む
他のモブどもの目に映らなくて済む
俺にとっては願ったり叶ったりなんだよ
だけどなァ
「個性思うように使いこなせないから私には価値ありません、だからヒーローじゃなくヴィランになるべきです――…ってか?!ふざけんじゃねえぞブス!!!思考回路イカレてんのかテメエはよォ!!!」
神奈を力任せに起き上がらせる
んな姿テメエには似合わねえ
「どうせテメエは!!そのクソみてェな偽善振りかざして、目に入った奴全部救いたくて仕方なくなんだよ!!!だったら!!!」
最初は俺の勝手な我儘だったな
用もねえのに俺の都合で毎日呼び出して
一緒に下校する口実を作っていた
呆れた顔して毎日来るくせして、一度も無視せず来てくれた
”万が一、本当に怪我をしていたら――…”
その可能性が少しでもある限り、コイツは相手が誰であろうと放っておける人間ではなかったから
我ながらせこい手を使ってたと思う
そうまでして手に入れてェと思っちまったんだ
あの日、保健室で出会ったあの瞬間から
気高く、か弱いお前を見つけたあの時から――…
なあ、神奈
今まできっと、取りこぼしてきた命がたくさんあったんだろう
その小さな身体では抱え込めない程たくさんの期待に応えようとしてきたんだろう
なら俺が
今、お前に掛けるべき言葉は
「今、すぐ!!テメエの弱さと向き合いやがれや!!!!」
お前が欲しがる言葉とは正反対のもんだ
背中を曲げんな
顔を下げんな
無様な姿を、俺以外に見せんな
お前にンな格好似合わねえんだよ
性に合わねえ事すんじゃねえ
「いつまで逃げようとしてんだコラ!!!無理でもやんだよ!!何人消してでもやんだよ!!そんで何千、何万の人を救うヒーローにテメエはなんだよ、神奈……ッ!!!!」
どうなったって、俺がお前を護ってやる
障害も全部ぶっ飛ばしてやる
だから、どうか
ただ、笑ってくれ