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【ヒロアカ】世も縋ら

第10章 白紙





『――…!』



暖かい”何か”に包まれた

ふわりと優しい匂いがした


「…血、滲んでんぞアホ」

『……あ………』


気が付かなかった、さっき止血してもらった手首の包帯が真っ赤な花を咲かせていた


「どんだけ力んでんだテメエは……」


どくどく脈打つ手首を見つめる



『……ねえ、爆豪さん…』

「あ?その呼び方きめえからやめろ」

『私は……助けてもらう価値…あったのかな……?』

「……はァ?」



コンマ数秒をかけてまで助けてもらう価値が
日の当たる場所に戻ってくる価値が
貴方に、優しくされる価値が――…



『誰も…っ大切な、人でさえ助けられないような私は……ッ!
なんにも価値がない……!!』


顔を覆う手の平から涙が溢れて落ちていく

この個性を持って生まれた時から背負い続けてきた”期待”と”責務”が
手の平からこぼれ落ちていく

プレッシャーにばかり押しつぶされて、小学生の頃から何一つ成長してこなかった個性

周囲の人間は気付いていたはずだ



弱い私に、この個性は荷が重すぎると



人の命を背負う覚悟なんて一度たりとも持てなかった

小賢しい方法ばかりを選んで、リスクを負わず、楽をして

周囲の期待に応えるフリをしていた

大丈夫、頑張ればいつかは、この個性を使いこなせるようになるよ

今はこんな私でも、いつかは役に立てるようになるんだよ

だから、期待して、良いんだよ

まだ、私には


”価値があるから――…”




『ないわよ、最初っから。私に価値なんて』

「おい」

『私は……ッ、人を、助ける側じゃ…ない……ッ!』


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