第10章 白紙
唇を噛みしめる
拳を握りしめる
だけどこの感情は、一ミリたりとも私の中から出ていこうとしない
――…これは明らかに
私への挑戦状だった
切断された脚はちゃんと止血されていた
翔が死んでしまわないよう、細心の注意が払われていた
…オール・フォー・ワン
あの男はわざと、私を嘲笑うかのように
私が戻せない傷を負わした翔を、私が縛られ続けているトラウマを
より残酷な形で見せつけたんだ
――”君には誰も救えない”
そう言われているんだ
『ッ――!!』
どこまで卑怯なの、どこまで残酷なの…ッ!!!
あの男は私の大切な記憶だけじゃなく、矜持までも無くそうとしている
”君にヒーローは務まらないよ”
”いるべき場所はそこじゃない”
”さあ、戻っておいでよ”
叫び出したくて口を開いても
咆哮は音にならず空気を震わせる
涙が溢れて止まらない
私はまた
同じ罪を――――…