第10章 白紙
『……ごめん……な、さい』
彼の顔を見て、その言葉が自然と零れていた
「ーッ…」
ガコンッ
『ッぃ…!!』
「―っ」
突然、激しい頭突きを喰らった
『~~~たあああ…ッ!!!』
「こんくれェ我慢しろや!!!」
『あ、んた…ッ!!彼氏じゃないの…!?いきなり頭突きする!!??』
「あァ!?するわ!!どんだけストレス溜まってたと思ってんだテメエ!!!しかも彼氏じゃねえよバァカ!!!」
『違うなら余計ひどくない!?どんな関係よ邂逅初っ端頭突くて―――…』
廊下に響き渡る言い合いの声が止まる
彼に、爆豪に
抱き締められたから
冷たい廊下に座り込む私を
上から潰すように
二度と
離れないように――…
「…悪かった」
耳元で零された言葉は、腕の力に反し弱弱しく
記憶を無くした私には、言葉の真意すら
何も理解出来なかった
『ごめん…なさい』
いっぱい心配させたんだろうな
辛い思い、いっぱい…させたんだろうな
…――”マジで、頼むから……ッ”
心の底からの叫びだった
後に続く言葉が、声に出さずとも聞こえた気がした
なのに抱き締め返すことが出来なくて、ごめんなさい
力なく床につく指先から
廊下の冷たさが染み上がる