第9章 再会
『ゲホッ…ック…!』
喉の奥から這い出た泥と
居心地の悪い浮遊感
なんとか目を開き、周囲を見渡せば
先程まで居た地下のバーとは打って変わり
コンクリートの拓けた場所に移動させられていた
なに…どこ?
辺りの景色に見覚えもなく
…というよりも、異質な
巨大な破壊の跡地のようだった
よく見るとヒーロー数名が
瓦礫に埋もれて倒れている
「ウェ…ッゲホ」
バシャと音を立て、黒い泥から爆豪勝己が姿を現わす
それに連なり次々と
敵連合の面々も転送されてくる
『…っ』
逃げられた訳じゃない
助けられた訳じゃない
事態は未だ好転してはいないのだと
理解した
『大丈夫?爆豪…さん』
「ああ…ッ!?」
ふらつきながら彼に駆け寄り
掛けた言葉は
彼にとってあまり気分の良いものではなかったようだ
「きっしょく悪ィ呼び方すんじゃねえ!!」
『なっ……』
そんな無茶な事を言われても困る
確かに爆豪…さん、からしてみれば旧知の仲かも知れないが
私からすれば、ものの数十分前に会ったばかりの怖い人だ
「チッ」
爆豪は舌を鳴らしながら、周囲を警戒するように神奈を後ろに下げる
しかし警戒していた逆の方向から
腹の底からゾッとするような声が囁かれる
「悪いね…爆豪くん、凪山くん」
『「!!」』
振り返った先に居た声の主は
骸の被り物に何本もの管を通した
悍ましい風貌の男だった