第8章 開闢行動隊
約束の時間が迫り、死柄木らも腰を上げた
「黒霧、準備しろ
馬鹿どものお迎えだ」
「はい」
カランコロンと氷を転がし
グラスの残りを仰ぎ飲む
空になったグラスをカウンター越しに受け取り、今から仕事に出向く黒霧の代わりにすすぎ洗った。
『おかわりは必要?』死柄木に向け問いかける
「もう要らねえ」
『そう』
そっけない会話の後、手持ち無沙汰になった
そんな時、バーの扉がギイと開き、最近見かけなかった翔が現れた
「なんつうタイミングで来んだよ」死柄木がボソリと文句を垂れた
それは翔の耳にも届いていた様で、ピクリと反応を示し、少し嫌味交じりに言い返す
「…悪かったな。こっちも用事がなれりゃこんな所来ないよ」
チラリと翔がこちらを見遣り
すぐに死柄木へと戻す
「なあ、俺も作戦に加えろよ」
座る死柄木を見下ろす様に唐突に発した
「……はあ?」
何を言いだすんだと呆れ声
「今回の作戦にお前を使う気はない
そう説明したはずだ
そうだろ?」
少量の怒気をはらんでゆったりと返す
「ああ、だけど事情が変わった」
「変わってねえよ。勝手に変えんな」
問答するのも面倒になり、やっぱりおかわり淹れろ、と注文する
「攫う相手…わざと俺に説明しなかったな」
その言葉に死柄木がピクリと反応を示す
「爆豪勝己…だろ?
だったら事情が変わる」
神奈には何のことだか
誰のことだかも分からなかったが
翔がこちらを鋭い目で睨みつけたので
少しだけ事情を察した
「こいつの大切なもんを壊すのは…
俺の仕事だ」
低く発された憎悪に
足が竦んだ